小学生の頃、私はよく忘れ物をした。
ハンカチ、ちり紙、筆記用具。
教科書、下敷き、リコーダーに体操服。
果てはランドセルまで忘れた時もあった。
あの時はさすがに先生に怒られた。
「お前は一体何しに学校に来ているんだ?」と問い詰められた。
しかし、「遊びにきてます!」などと正直に言えば、
地面に叩きつけられたメロンパンにされてしまうのは目に見えた。
なので私は口をつぐんだものだ。
中学・高校に入ってからも、私は何かを忘れ続けた。
そしてそれは、私がアフリカで傭兵になってからも変わらなかった。
戦場に行く時、私はいつも何かを忘れた。
靴とか、弾とか、ライフルとか。
だが、皮肉なものだ・・・戦場では何も忘れなかった奴から死んでいった。
いつも忘れ物をしていた私だけが生き残った。
そしていつしかそれはジンクスになった。
忘れ物をしていけば生還できる。
何かを忘れて来る者は、戦場に命を置き忘れてくることはない。
今では私は忘れ物をすることを忘れない。
忘れ物をしなくなった時、それが私の死ぬ時なのだ。