私は電柱になりたい。
きっとみんなも心のどこかではそう思っていることだと思う。
だが、電柱になりたい理由は人それぞれだ。
そこには様々なストーリーがあるだろう。
そこで今日は私の物語を話したい。
さて、私と電柱との出会いは小学生の時だ。
あれはうららかな春の日のこと。
私はいつものように颯爽と自転車を運転していた。
しかし、ハンドリングを誤って、全速力で電柱に衝突してしまったのだ。
半壊する私の自転車。
しかし、びくともしない電柱の姿。
それを見て「こいつにだけは勝てねぇ・・・」と私は悟ったものだ。
だが、一方で、大きくなったら電柱になりたいという感情が生まれた。
それが始まりだった。
それまでアウストラロピテクス並だった私は心を入れ替えた。
そして立派な電柱になるべく、必死に努力した。
強く、硬く、揺るがない。
そんな存在になりたい。
以来、私は己の研鑽を1日たりとも怠ったことはない。
そのはずなのだが、なぜだろう、私はところてんのようなぐにゃんぐにゃんした存在になってしまった。
今では一人で立つことすらままならない。
そんなわけで私は半ばで挫折したが、みんなは電柱になるという夢を諦めずに頑張ってほしい。
そして悪いドライバーを地獄に送ったり、根元からおしゃれにたんぽぽなんかを咲かせたりしてほしい。