昨日は友人のT氏と山谷(さんや)へ行ってきた。
山谷とは、東京のドヤ街のことだ。
西の西成、東の山谷なんて言われたりもする。
きっとそこらへんには人骨が転がり、
我々も追い剥ぎに遭って
無様に死ぬんだ。
そんな風に思っていた。
もちろん遺言も書いてある。
だが、そんな心配は無用であった。
治安は良く、
銃声すら聞こえないので、
拍子抜けしたぐらいだ。
さて、山谷で特筆すべきは
物価の低さである。
1泊2000円の宿がゴロゴロある。
80円のジュースまであるぐらいだ。
だが、安さなら我々だって負けてはいない。
2人はそこらへんで缶チューハイを買い、
公園にたむろして飲み始めた。
私 「これが本当のデフレだ!」
T 「すげぇだめ人間感だな」
2人の人間としての値打ちは
みるみるうちに下落していった。
そして底値になったところで、
山谷を出ることにした。
次は視界に東京スカイツリーが入ったので、
そちらを目指すことにした。
友人はさらに発泡酒とソーセージを買い、
そのまま歩きながら飲む始末だ。
T 「クソ、ソーセージがまずい。
屈辱だ。
屈辱としか言いようがない。
恥辱まみれのソーセージ」
私 「味わい深い光景だ」
T 「趣を感じるだろう?」
私 「ああ、もし平安貴族だったら
和歌とか詠んでいるレベル」
T 「どんな?」
私 「なんだろう・・・。
山谷から
うまれいづるや
くずびとよ」
T 「風雅だな」
その後、途中の神社で
おみくじを引いたりしながら、
我々はさらに歩き続ける。
T 「どう、最近歩いてる?」
私 「うーん、ぼちぼちかな」
T 「散歩はしてる?」
私 「それはかなりやってるよ!」
T 「ウォーキングは?」
私 「全然だなぁ。
というか3者の違いはなんなんだ?」
また、しばらく行くと。
T 「酒はいいなー。
様々なことを忘れられる。
あ、おみくじ捨てよ」
私 「凄まじいだめ人間感だ・・・。
そしてそんなことして大丈夫なのか?」
T 「何でもかかってこいよ」
私 「今日は生きて帰れないかもしれない」
だが、我々は意外にも
無事スカイツリーへたどり着いた。
あたりにはツリーの詳細が書いてある。
T 「分速1200メートルのエレベーターだってよ」
私 「10分乗っていれば成層圏まで行けるな」
行けるなら宇宙ステーションまで行きたいところ。
しかし、受付に行くと、
そこは凄まじい混雑ぶりだった。
看板を見れば70分待ちだ。
私 「そういや最悪の時期じゃないか。
なんでこんな時期に来たんだろう」
T 「なんかスカイツリーが見えたから」
私 「電灯に集まる虫レベルの行動だな」
飛んでスカイツリーに入る冬の虫であった。