違う。
これは私の趣味ではない。
今日は後輩のY君と会ったのだが、
彼からもたらされた新文明だ。
私は突如として現れたこの文化的黒船に衝撃を受け、
心の中で明治維新が起きた。
今日はこの新しい趣味を紹介しようと思う。
さて、まずは飲み切りストロー飲料が何を指すのかだ。
これは皆さんもよく見る、
小さいパックに入ったストロー付きのジュースのこと。
Y君はこういうパック型のりんごジュースを
おいしそうに飲んでいた。
私 「おいしそうでとても良いね。
Y君はりんごジュース好きなの?」
Y 「いや、別にりんごジュースは好きでもありません。
これを飲むという行為が良いんです」
私 「・・・?」
Y 「つまりですね。
重要なのはストローから
ちゅーちゅー吸うという行為に本質があるのです」
私 「?!」
もう話題を変えたほうがいいかと思ったが、
とても重要そうな話だったので少し突っ込んでみた。
私 「確かに、私も前々からそう思っていたよ。
1リットルのお茶とか安いから良いよね」
Y 「それはいけません」
私 「えっ?」
Y 「許されるのは500mlまでです。
できればそれよりもう一回り小さいのが望ましい。
その場で飲み切れること。
これが絶対条件です。
飲み切ることに意味がある。
ストローで吸うことに価値がある。
私はこういう小さいパック型の奴の
自販機を見かけると目が輝きます。
なんででしょうね」
私 「さぁ・・・」
勇気を出してもっと掘り下げてみた。
私 「やはり、ストローで吸うのには
何か気をつけることとかあるの?」
Y 「そうですね。
まず、ストローには2つのタイプがあります。
なんだと思いますか?」
私 「な、なんだろう・・・」
Y 「まず1つ目は太くて短いタイプのストローです。
そして2つ目は細くて長いタイプのストローです。
私はこちらの方を推したい」
私 「なんでだろう」
Y 「やはりこちらの方がちゅーちゅー
吸っている感が楽しめるからでしょう。
さらにすごいことに細長いストローには
曲げることが出来るやつもありますよね。
これが嬉しい。
あれは神です。
コンビニでは店によって
どちらかのタイプに分かれます。
是非注意して見てください」
私 「わかった、次からは気をつけてみるよ」
なんとなくだが、ストローのよさがわかってきた。
私は話をつなげようとした。
私 「やはりストローは良いよね。
スムージーとか飲むと吸っている感を感じる。
生きているという実感が得られるよね」
だが、それを聞くと後輩の顔色が変わった。
Y 「スムージー?そんなものは異端です。許されない」
私 「どうして・・・?」
Y 「だっておかしいじゃないですか!
あんな流し込まれている感は。
あんなのは人のやることではない。
そこに快楽はない」
快楽はなかった。
私 「スムージーはヤバイのはすごくわかった。
飲むヨーグルトとかはどうだろう?
あれもやはり悪いのだろうか」
Y 「いや、あれはとても良いです。
あれは体が求めている。
乳酸菌とストローの相性は良いのです」
なるほど、わからん。
私 「なるほど、とりあえず液体で細長いストローがついている物。
これをスーパーで探してみようかな」
Y 「それがいいでしょう。
スーパーの善し悪しはストローで決まる」
私 「ところで、ストローで吸うと何が良いのだろうか」
Y 「やはりちゅーちゅー吸っている感でしょうか。
あとのどごしも大事ですね」
私 「のどごし」
Y 「あと、飲み切りサイズというのも重要ですね。
終わりがあるというのは大事なことです。
すぐに飲めるので、ついつい2本目に行ってしまう」
私 「終わってなくないか?」
こうした議論を4時間ほど続け、
後輩を最寄りの駅まで送る間も話し続けた。
だが、結局のところストローの良さは
最後までわからなかった。
多分一生わかることはないんだろうな。
私はそう結論し、こいつをちゅーちゅー飲みながら帰った。
やはり良い物はのどごしが違う。
※追記
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