だいたい日刊 覇権村

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牛乳キャップで学ぶ仮想通貨

最近、仮想通貨という単語をよく見る。

仮想通貨か・・・(目を細める)

この言葉を聞くと、

どうも感慨深くなってしまう。

実は私は以前、仮想通貨に

手を染めたことがあった。


話は小学生の時に遡る。

小学生というと、みんなほとんど

お金を持っていないものだ。

遠足のおやつだって、せいぜい数百円。

時にお年玉という臨時収入もあるが、

「ママが預かっておいてあげるからね」

などと甘い言葉に騙され、

いつの間にか消滅しているものだ。


とはいえ、時代は資本主義社会である。

たとえ現実のお金がなくても、

お友だちと様々な物を

やり取りする必要があるのだ。

そこで編み出されたのが、

牛乳キャップ仮想通貨制度である。

牛乳キャップとは、

あの給食の時に出てくる

牛乳瓶のキャップのこと。

これを通貨として、

色んな物を買えるようにしよう。

そういう取り決めができたのだ。


以降、あらゆる物の価値が、

牛乳キャップで換算された。

たとえば、

鉛筆なら1本牛乳キャップ5枚、

掃除当番の代行は牛乳キャップ10枚、

レアポケモンのトレードなら

珍しいコーヒー牛乳キャップ1枚、

そんな具合である。

牛乳キャップがあれば、

何だって買えた。

上記の物はもちろんのこと、

宿題を代わりにやってもらうのもできるし、

刀剣の名工であった風間君の

新聞紙ブレードも手に入る。

こうして我々小学生の間に、

貨幣経済が急速に浸透した。

いかにして多くの、

そして珍しい牛乳キャップを手に入れるか。

それが楽しい小学生ライフになるか、

みじめなものになるかの分岐点だった。

私も血眼になってその術を探したものだ。


そんなある日、私はある方法を思いついた。

それは、牛乳屋さんと取引することだ。

近くの牛乳屋さんに頼み、

お手伝いなんかをして、

大量の牛乳キャップをせしめよう。

そんな夢の計画である。

驚くべきことに、この方法は実にうまくいった。

牛乳屋さんからは感謝されるし、

私は大量の牛乳キャップを手にした。

そして何でも買うことができた。

私は一気に牛乳キャップ長者となったのだ。


だが、栄光は長くは続かないものだ。

冷酷な資本主義の論理が、

幼い私を襲った。

さっき、私は大量の牛乳キャップを

ゲットしたと書いた。

だが、貨幣量が一気に増えると、

一体何が起きるだろうか?

そう、インフレである。

お金というのは、

数に限りがあるから貴重なのだ。

もし無限にお金が降ってくるなら、

それは紙くずになるだろう。

それは牛乳キャップ仮想通貨でも同じことだ。

昨日は鉛筆1本、牛乳キャップ5枚だった。

だが、今日は牛乳キャップ10枚。

そして翌日には20枚になっていた。

こうして牛乳キャップの値打ちは、

急速に下落していったのである。


しかも、悲劇はそれだけではない。

私は大量の牛乳キャップを

ロッカーに保管していた。

だが、梅雨の訪れとともに、

カビの脅威が襲来したのだ。

私の資産は、ロッカーごと崩壊した。

この前のコインチェック事件みたいなものである。

きっとあの時の私は、

FXで全財産を溶かしたような顔を

していたに違いない。


こうしてクラスの仮想通貨バブルは崩壊した。

私は冷酷な資本主義の論理を知り、

もう二度と仮想通貨には手を出さない、

と心に決めたのであった。