子どもの頃、私はソフトクリームをよく食べた。
ソフトクリームは私の大好物で、中でもチョコソフトは大のお気に入りだった。
ところで皆さんはおいしいものを食べる時、どのような戦略で臨むだろうか?
おいしいものを後に残して、ゆっくり食べる人が多いのではないか。
私もそういうタイプの人間だ。
しかし、ゆっくり食べていると、だんだん溶けてコーンの下からこぼれはじめていく。
私はその事実にショックを受けた。
そして、この世界には何か重大な間違いがあると悟ったものだ。
他にも様々な問題を目撃した。
魚を与えるより、魚の釣り方を教えろとよく言われる。
そういう観点からいけば、我々はソフトクリームよりソフトクリーム製造機を押さえなければいけないはずだ。
だが、決して手の届かないソフトクリーム製造機。
ソフトクリームより冷たい社会の現実。
そういったものに私は打ちのめされたものだ。
だが、そんなこの世界の矛盾も、チョコソフトの甘さは優しく癒してくれるのだった。
こうして子供時代の私はソフトクリームに導かれて育った。
だが、こうした関係が崩れるのが中学時代だ。
このぐらいの年齢になると、人々はブラックコーヒーに手を染め始め、
甘いものに対して軽蔑の視線を向けるようになるものだ。
私もそのようなお年頃になった。
そしてチョコソフトに対して、何となくよそよそしい態度を取るようになった。
そしてそのまま大人になり、今ではすっかり甘さ控えめなタフガイになってしまった。
チョコソフトを食べている子どもを見ると、少し懐かしく感じると同時に、思うこともある。
「なぁ坊主、今はチョコソフトを楽しむのも良いだろう。
だが、私のような硬派な大人になるためには、いつかはチョコソフトを卒業しなければならないんだ」
そんなことを思いながら、私はビターで大人なモカソフト、ダブルラージサイズをむしゃむしゃと食べるのだった。
アマーイ。