今日は用事があって新宿へ行ってきた。
そこで見たこと、聞いたこと、思ったことをありのままに書いていこうと思う。
さて、新宿に着いてまず我々を出迎えたのは、
駅の中に張り巡らされたダンジョンだった。
その構造は、入る度に万華鏡のように姿を変えると言われている。
ダンジョンには多くのモンスターが徘徊し、
数多のトラップが存在する。
そして毎朝多くのビジネスパーソンや学生が犠牲になっているのだ。
だが、都市に住む人々は冷酷で他人の死に無関心であるため、
ダンジョンは野放しにされている。
こうして屍は積み重ねられていくわけだ。
幸い私はダンジョン脱出アイテムであるアリアドネの糸を持っていたから助かった。
しかし、私といっしょに来た人達とははぐれてしまった。
以来、彼らは行方不明のままだ。
きっとミノタウロスの餌食になったか、
いまだに迷宮をさまよっているかのいずれかだろう。
迷宮を無事脱出できた私は、新宿の町を歩き始めた。
ここでひとつ、注意しておかねばならないことがある。
それは、新宿に隣接している歌舞伎町エリアには、
決して近づいてはいけないということだ。
あそこは力だけがすべてを支配する無法地帯だ。
今日も銃声と悲鳴は途切れることがなかった。
恐ろしい場所である。
私は時折聞こえてくる断末魔に耳を塞ぎながら、
足早に新宿中心部へと向かった。
街の中心部の光景は壮観であった。
天をつく高層ビルは林立しており、人の数も多い。
そしてさすがグローバル都市を謳うだけあって、
様々な種族が混在していた。
ドワーフやエルフ、半獣半人の亜人、果ては魔族や神族の方々までいたほどだ。
私はその多彩さに圧倒された。
また、新宿は商業も盛んであった。
ここではありとあらゆるものが売られている。
鉛筆から重力加速器まで何でも手に入る。
だが、路地の裏へと一歩入れば、
ここでは書けないような危険なものや奴隷などが売られている。
資本主義社会のダークな一面だ。
こうして私は新宿の光と闇の両面を見て歩いた。
その後、あれこれ用事を片付けていると、
あたりはすっかり夜になっていた。
私は最後に夜景を見ようと思った。
しかし、中層以上は上流階級の人間以外は立ち入り禁止であった。
しかたなく私は下層民向け展望台へと上った。
だが、下層民向けの眺めといえども、
それは私の目を驚かせるには十分な光景だった。
下界に広がる無数の灯火。
色とりどりのまばゆい光たち。
その景色はまるで夜空のように美しかった。
だが、私が住んでいるスラム地区に目を向けると、
そこには一点の光もない暗黒が広がっていた。
この世界の矛盾である。
私の住んでいるスラムについては、こちらを参照して欲しい。
私はため息をつきながら展望台をあとにした。
いつかは私もあの光の世界で生きたいものだ。
そんなことを思いながら私は、
自分が住んでいるスラム、零本木の虚無へと吸い込まれて消えた。