先日、はらぺこあおむしの
読書会を行った。
今日はそこで得られた成果を
発表していこうと思う。
さて、はらぺこあおむしとは、
皆さんもご存知の通り、
文明崩壊後の終末世界を描いた
子ども向けディストピア絵本だ。
作中では世紀末に生じた
カタストロフィーにより、
世界から法と秩序は失われる。
そしてそこでは餓鬼と化した人類が
跳梁跋扈するのだ。
だが、そこに1匹のあおむしが現れ、
人類の罪と業を引き受け、
世界に救いをもたらす。
そんなストーリーだ。
そのため子ども向けの絵本としてだけでなく、
人類が抱える問題を浮き彫りにする
哲学書としても名高い。
それでは1つずつ見ていこう。
まずはこちらだ。
文明崩壊の瞬間である。
この時から世界は荒廃し、
力が全てを支配する
末法の世が訪れる。
あおむしがまず食べるのは
りんごである。
だが、これを食べても
空腹は満たされない。
これは間違いなく
近代合理主義批判を意味している。
りんごとは古来より
知恵を象徴する禁断の果実だ。
人間は知恵、すなわち理性を用いて
文明を築いた。
だが、それは理性を使えば
何でもできるという驕りを生んだ。
そして誤った理性の使用により、
破壊を生み、絵にあるような
りんごの穴、すなわち
虚無の空洞へと世界を導いた。
ここでは人間の傲慢と
理性万能主義への戒め、
そうしたものを表している。
続いてあおむしが食するのはこれだ。
これは善悪二元論を否定する意味が
込められている。
絵にある2つの果実は、
それぞれ善と悪を意味する。
だが、注目してほしいのは
そのどちらにも穴があるということだ。
それはすなわちどちらの側も
誤りであることを意味する。
物事を何でもきっぱり善と悪に
切り分ける極端な善悪二元論は
どちらに対しても禍根を残す。
そして結局誰も満たされない。
この絵はそうした
二項対立にひそむ罠を警告している。
さらに見ていこう。
次の絵はこれだ。
青はよく自由を表す色として
国旗などにも使われることも多い。
そして果実が複数あるのは、
様々な種類の自由の存在を表す。
だが、やはりどれにも穴があいている。
これは間違いなく、
大審問官の場面を意識している。
その章では大審問官が、
キリストに対して
こんな問いを投げかける。
人々に自由は本当に必要なのか?
結局のところ人々は自由の負荷に
耐えられないのではないか?
自由に伴う責任と困難についての
問題提起である。
はらぺこあおむしでも
同じ問い掛けがなされていると
考えていいだろう。
この絵は我々に自由の意味を
考えさせてくれる。
次はこちらだ。
ずらりと並んだきらびやかな食べ物達。
これは資本主義への警句である。
資本主義経済が生み出す大量生産により
人間は豊かな物に囲まれた。
だが、いくら物質的に豊かになっても
欲望は決して満たされることがない。
人間にとって本当の豊かさとは
何なのかという問いを突きつける。
他にも様々な問題が取り上げられているが、
とてもじゃないがそれら全てを
紹介しきることはできない。
ここらへんは自分の目で
発見してみてほしい。
ここでは物語の帰結だけ
取り上げよう。
様々な苦難を経たあおむしは
やがて人類の業を全て飲み込む。
そしてみるみる内に膨れ上がるのだ。
人間の罪の大きさを物語っている。
あおむしは世界の難問に答えるため、
1人で孤独に瞑想を始める。
だが、長い時を経て、
あおむしはついに答えを見いだす。
人類救済の瞬間である。
感動する話だ。
私はこの絵本をこんな風に受け取った。
だが、私は国語の偏差値に
少々問題を抱えていてな・・・
このようにあれこれと見てきたが、
どのようなメッセージを受け取るかは
結局のところ人それぞれだと思う。
だが、そこに人類の葛藤と苦悩、
そしてその解答を見いだすのは
誰もが共通することではないだろうか。
もし何かに悩んでいるならば、
ぜひこの絵本を手にとってみてほしい。
あおむしが我々を導いてくれる。
![]() |
新品価格 |