だいたい日刊 覇権村

実益のないことしか書かない 毎日21時更新予定

こたつむりの一生

 この時期になると、

こたつむりをよく目にする。

こたつむりとは、

こたつを背負う生物のことだ。

そしてその外見はかたつむりに

酷似していることから

こう名付けられた。


だが、その生態は必ずしも

かたつむりと似ているものではない。

たとえば、かたつむりは

雨の日に活発に活動する。

だが、こたつむりは雨の日は

全く活動しない。

それどころか雪の日も、

曇りの日も、晴れの日でさえ

ほとんど活動しない。

非常に非生産的な生き物だ。


また、かたつむりは

足の遅さで有名だが、

こたつむりはかたつむりより

さらに動きが鈍い。

鈍重で一体何がしたいのかわからない。


他にもこたつむりは

こたつという殻に引きこもるだけでなく、

家という殻にも引きこもる。

二重の殻に引きこもっていると言えよう。

いや、それどころか

自分という殻にも引きこもり、

三重に引きこもる個体も確認されている。


こたつむりの主食はみかんだ。

たいてい殻の上に置いてあり、

やはりほとんど動くことなく、

それを捕食する。

どこまでも怠け者な生き物だ。


そんなこたつむりだが、

その一生はとても短い。

こたつむりは大体秋の終わり頃に

どこからか出現する。

だが、冬が終わり、

暖かくなる頃には

ほとんど死滅してしまう。

生きられるのは寒い時期の

ほんのわずかな期間だけなのだ。


そうだというのに

これほど非活動的なのだから

何も残すことなく消えていく。

子孫を残すこともない。

こうまでダメなことばかりだと

何のために生まれてきたのか

まるでわからない。

その一生は惨めで哀れなものだと

思われるだろう。

だが、不思議なことに

どの個体も幸せそうな顔なのだ。

その表情は安心しきっており、

そのまま眠りに落ちる。

たとえ短い人生で、怠け者で、

何も生み出さなくても

幸福に生きることも可能なのだ。

人間はこたつむりから

大いに学ぶ必要があるだろう。

かく言う私もこたつむりだ。

怠け者だけど幸せだ。

みんなもこたつむりになって幸せになろう。