「数学に優しい世界を作りたい」
数学科の人間がそんなことを言っていた。
一体それがどんな世界なのか、
まるで想像がつかない。
が、なんだかとても
惹きつけられるものがある。
そこで今日は「数学に優しい世界」が、
どんな世界なのかを考えてみよう。
とはいえ、いきなり答えを出すには、
あまりに手がかりが無さすぎる。
まずは逆に
「数学に厳しい世界」
を考えてみよう。
例えばこんな問題が
出されるとする。
問 たかしくんはりんごを2個持ちながら、
八百屋でさらにりんごを3個買いました。
たかしくんはりんごを何個
もってかえったでしょう?
高度な数学を使えば、5個という答えを
導き出すことができるだろう。
だが、数学に厳しい世界ではこうなる。
答 たかしくんは帰り道に
りんごを食べてしまったので0個
これは厳しい。
ただ問いを数学的に処理するだけでは、
答えを出すのは不可能だ。
そこでは言外のものを
読みとらなくてはならない。
主観性や想像力といった
文系的なスキルを求められる。
数式には馴染まない世界だ。
では、数学に優しい世界ではどうなるか?
上記の問題はこうなる。
問 3+2=?
答 5
主観や偶然が入り込む隙のない
完璧な数学的世界である。
そしてもはやたかしくんの存在は不要だ。
数学に優しい世界では、
りんごやたかしくんは
消滅せざるを得ない。
もし仮に存在できたとしても、
Xとか、Yとか、
移動する点Pみたいな
謎の記号と化していることだろう。
たかしくんの居場所はもう無い。
数学に優しい世界、
それが何なのかは
いまだによくわからない。
だが、そこはたかしくんにとっては
厳しい世界なのかもしれない。