だいたい日刊 覇権村

実益のないことしか書かない 毎日21時更新予定

君は耳剃りを知っているか?

今日は帰りに散髪へ行った。

私はいつも、足がつかないように、

毎回床屋を変えている。

今日も、一度も来たことがない

適当な床屋へ訪れた。

髪型はとくにこだわりはない。

本当はポケットからおもむろに

ゆで玉子を取り出して、

「こんな感じでお願いします」

とか頼もうかとも思った。

だが、今後の社会生活に響きそうなので、

やめておいた。

まぁいつも通り、

適当に注文するだけだ。

 

だが、今日の床屋は

いつもとちょっと違った。

メニューに「耳剃り」

というものがあったのだ。

なんでも、髪だけでなく、

耳の毛も切りますよ、

というサービスらしい。

耳剃りか。

やれるものならやってみるがいい。

言っておくが、

私はこれまで一度も耳への

外敵の侵入を許したことはない。

私の耳は難攻不落の要塞だ。

この要塞は馬の耳のごとく、

あらゆる念仏もお説教も防いできた。

決して誰も落とすことはできない。

それが私の人生の唯一の誇りだ。

今回も楽勝だろう。

私は軽い気持ちで、

耳剃りとやらを注文してみた。

 

開始直後、私はいきなり耳に

刃物を突っ込まれた。

穴刀という、耳の毛を

剃るためだけに作られた兵器らしい。

その鋭い刃で耳の毛を

削ぎ落としていくのだ。

要塞は陥落し、私の誇りは崩壊した。

その後、敵は人の耳で

やりたい放題であった。

走って逃げ出そうとも思ったが、

ここで下手に動けば、

確実に死が待っている。

敵が飽きてどこかへ行くまで、

私は震えながら待つしかなかった。

 

その後、なんとか命だけは

勘弁してもらった。

耳剃りで感じたこと。

それは挫折感、緊張感、

死の恐怖、敗北の惨めさ。

そういったものが一体となった

複雑な感情であった。

まぁ実際のところ、そんなに気持ちのいいものではない。

なんかシャリシャリするしな。

だが、風通しは良くなったような気がする。

次からは、イヤホンをしていくとか、

そういう対策をしていこうと思う。