缶詰というものは独特の魅力がある。
さして味はおいしいわけではない。
だが、あのちんまりとした金属缶には、
どこか人を誘惑する何かがある。
そんな風に感じる。
昔から私は缶詰がとても好きだった。
子どもの頃はよく欲しがったものだ。
初めての缶詰は桃缶だった。
缶詰といえばやはり桃缶だろう。
最初に物心がついた時に
目がいったのは、やはり桃缶だった。
その時はありとあらゆる手段を使い、
桃缶を手に入れたものだ。
そして私は隠れてそれを食そうとした。
さぁ、一体どんな味がするだろう?
しかし、その缶は、缶切りがなければ
開けられないタイプのものであった。
缶切りという概念を知らなかった私は、
なすすべもなく缶詰に敗北した。
1R 缶詰 ○ ー × 私
続いての対戦相手は、
やはり桃缶だった。
私も馬鹿ではない。
前回の失敗に学び、
今度は秘密兵器を用意した。
そう、缶切りである。
これさえあればもう安心。
私は余裕綽々で
だが、現実はそんな私の慢心を
粉々に打ち砕いた。
缶切りの使い方がわからない。
何なんだろう、このとんがりは。
とりあえず私は、
缶切りで殴る、叩くなどの
クロマニョン人レベルの行動を取った。
だが、それは缶詰の表面と、
私の内面を軽くへこませたぐらいだ。
こうして私は第2の敗北を喫した。
2R 缶詰 ○ ー × 私
ここに至りて私は考えた。
これは戦い方ではなく、
相手がまずかったのではないか?と。
桃缶は難易度が高すぎた。
初心者はもっと弱い缶詰に
挑むべきなのだ。
そう結論づけた。
そして選んだ相手はコーンビーフ。
こいつはたやすい。
なぜなら缶切りが最初からついている。
しかもご丁寧に使い方まで書いてあるのだ。
これでは開けて食べてくださいと
言っているようなものである。
私は使用法に従い、
使い捨て缶切りをキリキリと巻き、
缶を開いた。
今回は私の勝利である。
私は満足感と共に
中身を口に運んだ。
まずすぎて吐いた。
3R 缶詰 ○ ー × 私