皆さんはエッシャーをご存知だろうか？
彼は錯視、つまり騙し絵で有名な画家だ。
名前は知らずとも、
作品は見たことがあると思う。
例えばこんな絵だ。
階段を降りているはずなのに、
いつの間にか1番上の段につながっている。
こういう錯覚を引き起こすような作品を
たくさん描いているのだ。
そういうわけで、私はエッシャー展を
楽しみにしていた。
きっと展覧会では様々な方法で騙され、
人間不信になって出てくるのだろう。
気も引き締めて行かねば。
さて、会場の上野の森美術館には
無事たどり着いた。
だが、その光景に私は目を疑った。
最後尾が見えないほどの長蛇の列だ。
軽く180分待ちである。
ここはディズニーランドか？
私は困惑した。
だが、すぐに合点がいった。
そうか、これが錯視か。
きっとこの長蛇の列は錯覚なんだ。
こんなにたくさんいるように見えて、
本当は誰も並んでいない。
行けばすんなり入れるのだ。
危ないところだった。
もう少しで騙されるところだった。
私は気を取り直して、
入り口に近づいた。
すると、スタッフから
「最後尾は向こうになります」
と、地の果てを指された。
現実だった。
これがエッシャーのすることなのか？
結局、エッシャー展には、
入ることすら叶わずに終わった。
私は失意の内に帰宅した。
しかし、帰ってから改めて考えて気づいた。
もしかしたらあのスタッフも
錯視だったのかもしれない。
それを見破り、無視して入れば、
エッシャーにたどり着けたのだ。
やられた。
さすがエッシャーだ。
次からはもっと気をつけて行こうと思う。
