だいたい日刊 覇権村

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読書感想文 沢木耕太郎『凍』 8千メートルの頂へ

沢木耕太郎が書いた『凍』という

ノンフィクション小説を読んだ。

これがとても面白かった。

今日はその読書感想文を書こう。

 

さて、舞台はギャチュンカンという

8千メートル級の雪山だ。

世界最高峰のエヴェレストとは、

目と鼻の先ぐらいの距離にある。

登山の最難関というと、

エヴェレストかと思いきや、

実は必ずしもそうではない。

例え標高が低くても、

登山を阻む断崖絶壁が鋭ければ、

そちらの方が難易度が高かったりする。

ちなみに世界で最も死者を出している山は、

実は2千メートルにも満たない

日本の谷川岳らしい。

このギャチュンカンは、

絶壁の高さ、鋭さから

エヴェレストより難易度が高い。

そしてそこに主人公である

クライマーの山野井夫妻が挑む。

 

彼らを最初に阻んだものは、

絶壁の鋭さだ。

中には傾斜角が60度を超える物もある。

そして彼らは時にハーケンを使いながら、

苦しんで登っていく。

 

だが、それを言ったら、

私だって負けていない。

今日だってたくさんの階段を登った。

しかも階段の傾斜角は90度である。

そして私は時にエスカレーターを使いながら、

苦しんで登った。

標高は8メートルにも及ぶ。

クライマーとしては

五分五分といったところか。

 

次に彼らを襲ったのは寒さだ。

極寒のアルプスには雪が吹き付け、

気温は氷点下40度に達する。

彼らは凍える体を奮い立たせ、

絶壁を登っていく。

 

だが、それを言ったら、

私だって負けていない。

今日なんか20度に設定された

極寒のクーラーの中を突き進んだ。

しかも、知人がド寒い親父ギャグを

立て続けに発して、

あたりには冷たい風が流れ込む。

その気温は氷点下200度に達する。

やはりクライマーとしては五分五分だろう。

 

さらに彼らを襲ったのは睡魔だ。

登山は時々テントを張りながら、

数日かけて行うものである。

だが、気候の変化や雪崩などによって、

睡眠が取れないこともある。

徹夜で登山を行う日もあるのだ。

 

あっ、無理です。

私は潔く負けを認めた。

徹夜なんかしたら死んでしまう。

悔しいが、彼らの方がクライマーとして

一枚うわ手なのだと認めざるを得ない。

 

また、彼らは凍傷にも悩まされ、

指を何本も落とすことになる。

 

あ、もう無理。

全然無理。

私なんて指はおろか、

原稿を1本落としただけで

心がぐんにゃりしてしまう。

もしかしたら彼らは私より

何倍もすごいのかもしれない。

 

このように若干クライマーとしての

プライドを傷つけられながらも、

私は彼らとの登山を楽しんだ。

こんな暑い季節だからこそ

楽しめる本なのかもしれない。

そしてエアコンの温度を

最低気温にセットすれば、 

きっと彼らと同じ臨場感が

味わえることだろう。