だいたい日刊 覇権村

実益のないことしか書かない 毎日21時更新予定

白湯への憧憬

白湯(さゆ)というものは良いものだ。

上品な白。

ほのかな甘み。

白湯には、そうしたものを

感じさせる風情がある。


私は昔から白湯が好きだった。

その語感の響きや、

色や形が好きだった。

だが、残念ながら

口にする機会はなかった。

特に村の掟で禁じられていたり、

まだ火を起こす文明が

到達していなかったわけでもない。

単純にたまたま機会がなかっただけだ。

そういうわけで私は白湯に対しては

淡い憧憬を感じていた。


だが、しばらくして私はようやく

白湯を飲む機会を得た。

それは友人の家に行った時のこと。

その時の友人は病み上がりで、

「健康のために白湯を飲もう」

と言いだした。

私はもちろん叫んだ。

「私も!」

そして友人と白湯を飲むことになった。


しばらくすると友人は白湯を

持ってきてくれた。

それは紛れもなく白湯だ。

念願の白湯だった。

私は恐る恐る一口飲んでみた。

すると、それは長年待っただけあって、

とくりとくりと体に染み込んでいった。

そして思った。


「お湯じゃん!」


ただのお湯だった。

以来、白湯への憧憬は消えて久しい。