昨日は、かなり久しぶりに
旧友に会った。
私は彼の生息地に赴き、
最寄り駅で待ち合わせた。
友人はしばらくしてから到着。
友 「おお、なんでぶっだ祝日に
そんなキッチリした格好してるの?
まともな人みたいじゃん」
私 「そう。中身がこんなんでも、
外見だけまともにしてれば、
まともっぽく見られるからな」
友 「まぁとにかく、よく来てくれたね。
今日は俺が手料理を振る舞うよ」
私 「え、料理できたっけ?」
友 「・・・」
私 「(大丈夫かな・・・)」
友 「今日の献立は生姜焼き。オーケー?」
私 「外はまるこげ、中は半生。
これなーんだ?みたいな
奴じゃなければ大丈夫」
友 「・・・」
私 「(ほんと大丈夫かな・・・)」
その後、食材を買い、
友人宅で料理が始まった。
友 「じゃあまずは肉に下味をつけるか」
そう言うと友人は、
調味料と肉を同時にフライパンに入れ、
それを焼き始めた。
私 「あれ、下味って、
しばらく漬け置きするんじゃないのか?」
友 「ぶっだは黙って食って、
ただ『おいしい』とだけ言えばいい」
私 「そうか」
私は静かに見守ることにした。
だが、しばらくすると
友人は叫んだ。
友 「あ、しまった!
生姜買って来忘れた!」
私 「しょうがないね」
突然あたりには暗雲が立ちこめ、
このまま生姜なき生姜焼きに
なるかと思われた。
だが、必死に家を探したら、
幸いにも生姜は見つかった。
最悪の事態はなんとか避けられた。
そしてホッと安心していると・・・
友 「あ、しまった!
玉ねぎ切るの忘れた!
玉ねぎと肉との先後関係が!」
私 「・・・」
即座に対応策を考え、
玉ねぎは肉を炒めながら、
追加投入することにした。
そして友人は玉ねぎを切り始めた。
友 「あ、しまった!
切り方間違えた!」
私 「・・・」
フライパンには歪な形の玉ねぎが、
ドバッと投入された。
そして両方に火を通していく。
友 「生姜焼きのにおいがする」
私 「生姜が入ってるからね」
友 「あまりにも冷静なツッコミだ」
また、しばらくすると、
友 「あ、しまった!
米を炊き忘れた!
米と肉との先後関係が! 」
私 「今日何回『しまった!』って
聞いたんだろう・・・」
友 「そうだ!米が炊けるまでの間、
生姜焼きは蓋して煮込んでおこう」
私 「生姜焼きとは一体」
友 「生姜焼きは煮物。
ぶっだ知らなかったの?」
私 「知らなかった。
蒙を啓かれた気分だ」
私は生姜焼き観を強く揺さぶられた。
そして生姜焼きは煮え立ち、
じっくりコトコト煮込まれていった。
しばらくすると米が炊け、
生姜焼き(?)も完成だ。
友 「これ、なんて料理なんだろう?」
私 「生姜焼きでは?」
友 「へー、生姜焼きって
こうやって作るんだー」
私 「オイ」
友 「まぁでも大事なのは味だ、味。
他はどうだっていい。
ともかく食って見ろって」
私は恐る恐る生姜焼き(?)を食べた。
私 「あ、おいしい!」
友 「だろ?」
私 「でも生姜焼きではない」
友 「だろ?」