だいたい日刊 覇権村

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手袋は拾うべきか否か

今日は前から歩いてきた人が、
手袋を落とした。
なので、私はそれを拾って、
相手に渡そうとした。
 
だが、ここでその手が止まった。
はたして、本当にこの手袋を
拾っていいのだろうか?
中世ヨーロッパの貴族にとって、
手袋を地面に投げつけるとは、
決闘の申し込みを意味する。
 
もし手袋を拾ってしまったならどうなるか?
それは
「貴公の決闘の申し込み、しかと受け取った。
さぁ、いつでもかかって来られよ。
いざ尋常に勝負!」
という意思表示に他ならない。
そうなれば間違いなく
死人が出ることになるだろう。
そしてその死人とは私のことだ。
 
いや、もしかしたら、
これはそんな物騒な意味では
ないのかもしれない。
もっと比喩的な意味ではないか?
例えば、手袋を投げるという慣用句には、
「相手との絶交」という意味もある。
 
絶交!
まだ知り合ってすらいないのに・・・。
 
どちらにせよ、あまりいい結果にはならなそうだ。
 
ひとまず、私は今の武装を確認した。
スマホ、ポケットティッシュ、財布、ローソンのレシート。
うーん、多分こっちが死ぬな。
 
いや、まだ決闘と決まったわけではない。
もしかしたら、ただ気づかず
手袋を落としただけということもある。
可能性は低いが、そちらの線も捨てきれない。
 
もしそうであった場合、
手袋を拾わなかったらどうなるか?
きっとしばらくして手は凍傷になり、
全ての指は腐り落ち、
壊死した傷口から全身に毒素が回り、
苦しみながら死ぬことになるだろう。
 
やはり見逃すことはできない。
私は意を決して手袋を拾い、
落としたご婦人に渡した。
すると、
 
「あ、気づきませんでした!
どうもありがとうございます!!」
 
と、とても感謝された。
どうやら私はかなり根本的なところで、
何か間違えていたようだ。
相手が女性なら、決闘なんて
申し込むわけないではないか。
こんなことで悩む必要はない。
もし女性が手袋を落としたら、
気にせず拾ってあげよう。
 
だが、相手が男なら間違いなく決闘の申し込みだ。
絶対に拾うな。
 

 

 

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