エンゲル係数という言葉がある。
それは家計で食費の割合が、
どれぐらい高いかの指標だ。
詳しい計算式はエンゲルに聞いてくれ。
興味深いのは、エンゲル係数が高いほど、
貧困率が高いということだ。
食べ物で収入のほとんどが消えるなら、
それは確かに貧困だろう。
逆にエンゲル係数が低ければ、
とても裕福であるか、
ダイエットに成功しているか、
そのどちらかだ。
それを前提として、今日の話に入ろう。
今日は、とても良い日だった。
ちょっとした臨時収入で
5000円が入ったのだ。
小市民な私はこれぐらいでも、
とてもゴージャスな気分になる。
この時点でのエンゲル係数は0。
いかにしてこのまま低い水準に保つか、
それが私が富裕層になれるかどうかの
分水嶺だ。
私は財布を固く引き締めた。
だが、帰りの途中、
普段よく行く店に通りがかった。
このコロナ騒動で、
中にはほとんど客はいない。
ふと店員と目が合った。
「ヘイユー、カモン!」
そう目が訴えかけていた。
私は目力に屈して、
店に入ってしまった。
さて、入ってしまったのなら、
もう派手に飲むしかない。
目標額は5670(コロナゼロ)円。
ほぼ貸切状態の店内で、
飲めや歌えの大宴会を開く男の姿が、
そこにはあった。
こうして臨時収入は全て吹き飛んだ。
本日のエンゲル係数は100。
圧倒的貧困の幕開けである。