お題「#おうち時間」
ステイホーム。
最近は家にこもってばかりだ。
ずっと自分という殻に
閉じこもっている。
これではかたつむり並の存在である。
いや、かたつむりだって、
殻にこもってないで、
ちゃんと外で動いている。
つまり、今の私は、実質的に
かたつむりに劣る存在ということだ。
このままではいけない。
取り戻せ、人間の誇りを。
思い出せ、霊長類の矜持を。
私は強い志を持って外へ出た。
かたつむりに負けないために。
とは言うものの、行き先には
気をつけなければならない。
もしこの時期に東京から
地方へ行ってしまったら最期、
村人にこっぱみじんにされてしまう。
もっと人が少ない所へ行きたい。
できれば無人地帯が望ましい。
そうすれば私は自由になれる。
煩わしい人間関係からも解放される。
私は人がいなさそうな場所を考えた。
河川の橋の下とかどうだろう？
こうもりさんではないのだから、
そんな暗がりに行っても仕方がない。
押入の中はどうか？
人はいなさそうだが、
外じゃない。
結局、なかなか良い場所が思いつかず、
近所のうら寂れた公園のベンチで
じっと座っていた。
不思議と解放感も自由も感じなかった。
ともあれ、私は外に出た。
これでかたつむりに勝てただろうか？
否。
考えてみると、かたつむりは
ただ移動しているだけではない。
殻を背負いながら歩いているのだ。
もし彼らに並ぶためには、
自宅をよっこらせと背負い、
ぬめぬめとぜん動運動を
行わなければならない。
人類には不可能である。
こうして私はかたつむりに完敗し、
敗北感と共に5月を迎えた。
