ふと、昔使っていたインターネット
サービスのことを、思い出した。
久しぶりにログインしてみよう。
私は公式HPからログイン画面を開いた。
しかし、問題が起きた。
パスワードがわからないのだ。
案の定といったところか。
何せ設定したのは随分前だ。
今日の朝食さえ思い出せない私が、
数年前のパスワードを
覚えているはずがない。
そこで切り札がある。
秘密の質問である。
だが、正直これも絶望的に思われた。
答えはおろか、そもそも質問自体、
まるで覚えてない。
もう二度とログインはできないのか。
私は一抹の寂しさを覚えた。
だが、一応ダメ元で秘密の質問を開いた。
「アルジャーノンに?」
と短く表示される画面。
「花束を」
と、静かに打つと、ロックは解除された。
そこにあったのは、秘密の意味も、
セキュリティーの意味も、
まるで理解していない十代の頃の私であった。