だいたい日刊 覇権村

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失われたTシャツの思い出

今週のお題「お気に入りのTシャツ」 

私にはお気に入りのシャツがあった。

随分昔の話だ。

小学生の頃だっただろうか。

 

図工の時にTシャツを作る時間があった。

自分で好きな絵を描いて、

それをプリントして

Tシャツにするというものだ。

 

当時の私は恐竜が大好きだったので、

恐竜をたくさん描いた。

ティラノサウルスプテラノドン

ブラキオサウルスにステゴサウルス、

イクチオステガなんかも描いた。

 

このTシャツがプリントしてみると

なかなか出来が良くて、

そればかり着ていたものだ。

 

しかし、ある夏休みの日、

学校のプール教室へ行った時のこと。

水着から私服に着替えようとしたら、

Tシャツが無くなっていたのだ。

おそらく、山本君あたりが

パクったのだろう。

 

当時の私にとって、

山本君は邪悪な存在だった。

いつもお互いの物を

破壊していた気がする。

核攻撃を解禁した米ソ関係と言えば

わかりやすいだろうか。

 

私は「臥薪嘗胆!」と叫び、

いつか山本君のお気に入りTシャツも

破壊することを心に誓った。

 

問題は帰りだ。

私は上半身裸で帰らなければならない。

だが、不思議と私に不安はなかった。

 

そう、俺には見える。

失ったはずの恐竜Tシャツの存在が。

物理的には消滅したが、

今も確かに私の身を包んでいるのだ。

 

おかげで私は半裸でも、

羞恥を感じることは全くなかった。

 

たとえ不安になっても、

この顔面崩壊気味の

ティラノサウルスが、

が勇気を与えてくれる。

 

半裸だと恥ずかしいという

固定観念に囚われても、

首がぐにゃぐにゃなった

ブラキオサウルスが、

思考の柔軟性を与えてくれる。

 

追いつめられたとしても、

もうなんだかよくわからない

イクチオステガが、

「何でも自由で良いんだよ」

と赦しを与えてくれる。

 

私は恐竜パワーが

体に流れ込んでくるのを感じた。

これなら何だって大丈夫だ!

 

だが、数秒後に女子集団に

ゴミを見るかのような目で

一瞥された瞬間、

私の心は秒速で折れた。

 

そうか、裸の王様も

こんな気持ちだったのだな・・・

 

いくら恐竜が力をくれるといっても、

彼らは全て滅びた身。

滅んだ恐竜では、

生きている猿どもには及ばない。

 

私は体を別の方向に向けた。

そして、獲物を狩る

ヴェラキラプトルのように、

走って逃げ帰った。

 

 

 

 

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