私はきりたんぽを食べたことがなかった。
たしかなまはげがいつも
持っているやつだったろうか。
ともあれ、食べたことのない
食べ物というのは、
常に魅力を放つものだ。
きりたんぽを見る度に
「おいしそうだな・・・」
といつも思っていた。
だが、身の回りにはなく、
食べる機会は全くなかった。
しかし、今日はついに
念願のきりたんぽに出会った。
スーパーで大安売りしていたのだ。
私は迷わず5本入りのパックを買った。
私は最良の夢に思いを馳せた。
「ああ、夢のきりたんぽ。
どんな味なのだろう。
きっともっちりとしていて、
かすかな甘みがあるんだ。
食べるのが楽しみだなぁ」
私は帰ってから鍋を作り、
きりたんぽを放り込んだ。
そして、一口食べてみた。
「ウッ、想像していたのと違う。
なんかゴワッとしてる・・・
どうしよう、あと4本もある。
1本でもう満足したんだけど・・・
そう、これは一本満足バーなんだ」
きりたんぽ=一本満足バー
という等式が私の中で成り立った。
私はこの見解に満足した。
きりたんぽ達は不満そうだった。