先日、ツトム氏と
合羽橋(かっぱばし)道具街に
行ってきた。
合羽橋道具街とは、
浅草の近くの料理道具専門の
商店街で、長い歴史と伝統がある。
たわし専門店や刃物専門店、
食品サンプル専門店など、
ニッチなお店が目白押しだ。
ツトム氏は道具に
こだわる男だったので、
彼に連れられて来た。
カッパというからには、
河童と何か関係があるのだろうか。
探してみると、実際に河童との
関連を示す碑文があった。
読むのは面倒だと思うので、
要約する。
要するに
「河童は良い」
ということだ。
実際、見てみよう。
良いだろう?
だが、良かったのは
最初だけで、
しばらく行くと、
急に元気がなくなってきていた。
ツトム 「これ、月曜日の俺だ・・・」
私 「私も平日こんなかんじ」
さて、今日の目当ては包丁店だ。
「ぶっだにも見せたいものがある」
と言われてついてきた。
店に入ると、ツトム氏は
カウンターに行って、
カバンから包丁を出し、
店員の前に並べた。
・・・なんだろう?
前に包丁を盗んで
自首しに来たのだろうか?
こんな哀れな様を私に見せて、
一体どうしたいのだろうか。
私が困惑していると、
彼は店員に
「この包丁を研いでください」
と頼んでいた。
どうやら盗品ではなく、
純粋に私物のようだ。
よかった。
ちなみに見せたいものとは、
高品質な店の包丁のことだった。
「ぶっだもよく料理をするし、
是非良い品に触れよう!」
包丁は実際にさわるのも
オーケーだった。
なので、試しに1つ手に持ってみた。
程よい重み。
初めてとは思えないほど
手になじむグリップ。
触れた瞬間、
この包丁を使ってみたい
という衝動に駆られた。
妖刀を手にした侍が、
辻斬りになってしまう理由が
少しわかったがする。
買っちゃおうかな・・・
そう思って値札を見ると、
そこには2万円と書かれていた。
それを見た瞬間気づいた。
「しまった!これは罠だ!」
これは私を包丁沼に引きずり
込むための巧妙な罠だ。
私はまんまと計略にハマった
というわけである。
一体何ということを
してくれたのだ。
私は彼を問い詰めようとした。
だが、当のツトム氏は
4万円の包丁を手に、
ツ 「クソッ!俺はいったいどうすれば!」
と、悩んでいた。
彼もまた計略にハマっていた。
どうやらあまり深く
考えていたわけじゃなさそうだ。
私 「いつも人生に苦悩している人間が、
包丁持って思い悩んでいる様はヤバいな」
ツ 「欲しい!しかし高い!
でも、これを逃したらいつ
手に入るかわからない!」
店員 「そうなんですよ~
これ、なかなか回ってこない
品なんですよね~」
ツ 「ほら、そういうこと言う!」
しばらくの間、深い葛藤をしていたが、
最終的に4万円の包丁を買っていた。
そして、
「ああ、買ってしまった・・・」
などとつぶやいていた。
やはりこんな哀れな様を
私に見せて、
一体どうしたいのだろうか、
と思った。