だいたい日刊 覇権村

実益のないことしか書かない 毎日21時更新予定

文明が人間から奪ったもの

家のインターホンが

壊れてしまった。

外からチャイムを鳴らしても、

全く音が出ない。

 

しかも、不運なことに、

Amazonの配達が来る日にだ。

もう修理している時間もない。

 

私は全ての神経を

聴覚に集中することにした。

物音を立てず、静かに、

聞き耳を立てよう。

 

私は感覚が研ぎ澄まされて

いくのを感じた。

 

これは人間が文明生活で

失ってしまった野生の感覚だ。

 

野生動物は音に敏感である。

ウサギの耳が長いのも、

外敵の脅威に気づくためだ。

 

だが、文明に守られた人間は、

外敵の脅威を忘れてしまった。

 

音に鈍感になり、

生物として退化した。

 

だから、背後から

迫りくるプリウスにも

気づけなくなってしまったのだ。

 

だから、高齢認知症ドライバーに

あっけなく狩られてしまうのだ。

 

 

また、音を失うことは、

世界の美しさを失うことも意味する。

 

世界は美しい音で満ち溢れている。

耳をすませば、様々な

ハーモニーが聞こえてくる。

 

雨が地を叩く心地いい音。

風に揺られる木々のざわめき。

鳥や虫達の華やかな調べ。

深夜に怒鳴り散らす

酔っぱらいの叫び声。

 

いや、最後のはどうでもいいな。

 

ともあれ、文明生活は、

人々からなんと多くの

音を奪ってしまったことか。

 

文明は我々を豊かにしたが、

同時に貧しくもした。

 

そうこう言っている間に、

Amazonの配達の人が来たようだ。

 

私は勢いよくドアを開けた。

 

すると、道路の向こう側には、

仰天する中年と飼い犬の姿があった。

 

私は勢いよくドアを閉めた。

 

 

 

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