寒空の下、哀れな男が
知り合いに電話をかけ、
しいたけを売っておりました。
「しいたけはいかがですか？
しいたけはいかがですか？
おひとつでいいからお願いします」
男は必死に呼びかけました。
それでもしいたけは売れません。
まるでマッチ売りの少女
のような光景である。
彼女はその後
どうしたのだったか。
たしか売れ残った商品に
火をつけ、一斉在庫処分を
決行する話だった気がする。
しかし、そういうわけにもいかない。
しいたけだけでは先行きは
厳しいと判断した私は、
市場調査を行った。
そして、抱き合わせ販売を
行うことにした。
プランターで育てたハーブ、
タイムやローズマリーを餌に
人々を勧誘した。
しいたけとセットで
取れたてのハーブもくれてやろう。
そして釣り上げられたのが
友人のT氏であった。
彼はビニール袋に入れた
ハーブやしいたけの
においをかぐと、
「くぅー！こいつぁハイになるぜー！」
と、喜んで持って帰ってくれた。
絶対に人に見られたくない光景だった。
