今週のお題「赤いもの」
柿をもらった。
真っ赤な、
燃え上がるような
真っ赤な柿だった。
手に取ってみると、
ずっしりとした重さが
伝わって来る。
素人目に見てもわかる。
これは、実にいい柿だ。
味もきっと甘美なものだろう。
食すのを想像しただけでも
幸せな気持ちになれた。
一体どうやって食べようか。
こんなに良い柿なのだ。
煮たり焼いたりして、
素材本来の味を殺して
しまってはもったいない。
どうしたら柿のうま味を
活かせるだろうか？
その方法を調べてみると、
シャーベットにするのが
良いと見つけた。
冷凍庫で1～2時間ほど
冷やし、中を割ってみると、
シャーベット状に
なっているそうだ。
余計な調理をせず、
持ち味を最大限活かす。
まさに私が求める最適解だ。
注意しなければならないのは、
時間配分だ。
冷凍庫に入れる時間は、
短すぎても長すぎてもいけない。
短すぎれば中途半端な
状態になるし、
長すぎればカッチコチで
食べられたもんじゃない。
そうなれば溶かしたとしても、
味の劣化は避けられない。
私は慎重に柿を冷凍庫に入れた。
そして、一週間の月日が流れた。
今日、私はアイスが食べたくなった。
そういえば、冷凍庫に
スーパーカップがあったような。
私は期待を胸に
冷凍庫の扉を開けた。
だが、残念ながら
アイスはなかった。
代わりに、目の端に
赤い物が見えた。
変だな・・・。
こんな派手なものを
入れた記憶はないのだが。
私は目を凝らして
「それ」を見つめた。
真っ赤な、
燃え上がるような
真っ赤な柿だった。
手に取ってみると、
ずっしりとした重さが
伝わって来る。
素人目に見てもわかる。
これは、実にいい柿・・・だったものだ。
もはやそこに生前の姿はない。
凍結膨張により、
内部からミチミチと
実があふれ出し、
汚染が広がってる。
ナニコレ・・・。
孵化する直前の
エイリアンですか？
一体どうしてこんなことに・・・
時間というものは戻らない。
一度起きてしまったことは、
二度と元には戻らない。
だから人は後悔のない
選択をしなければならない。
進学、就職、結婚、柿のシャーベット化。
この柿は自らの実を犠牲にし、
その事実を私に伝えてくれた。
こんなに甘い柿だけが、
甘くない現実を知っていたのだ。
だが、すべては遅すぎた。
私はこの尊い犠牲を糧に、
今後の人生を強く
生きていこうと思う。
