今日は帰りに回転寿司へ行った。
私の好きなネタはいくつもある。
どれが一番好きかを決めるのは難しい。
その日のコンディションによって、
好みはだいぶ異なるからだ。
寿司の好みは全て時価なのである。
私にとって今日一番の旬は
ホタテだった。
寿司屋へ入り、真っ先に
食べることにしたのもホタテである。
寿司が流れてくる間、
私は期待に胸を膨らませた。
とても待ちきれない。
しかし、そんな時、
スマートウォッチから警報が来た。
「お前、心拍数高すぎ。落ち着け」
いかん、寿司に心を持っていかれている。
このままでは寿司に負ける。
私は呼吸を整え、
精神を統一した。
明鏡止水。
邪念を捨て、
世界の声を聞き、
寿司と一体となること。
己に打ち克ったものだけが、
ホタテにも打ち克つことができるのだ。
うん、なんかそれっぽい理を
見出したぞ。
華道や茶道に連なる道として、
寿司道を始めようか。
そんなビジネスプランに
思いを巡らせている間に、
私のホタテはどこか遠くへ流れて行った。