前回のつづき
バス停を下りて、
私は吉見百穴に向かった。
通りには冒険者のために、
近辺のマップが表示されていた。

要するに道と池以外、
ほとんど何もないということだ。
他の看板と言えば、
「ベヒーモス出没注意」
とかそんなかんじだ。
目的地にはすぐに着いた。
古代人達もこのうどん屋で
うどんを食べていたのだと思うと、
悠久の時の流れを感じる。
私も吉見百穴に入る前に、
食べていくことにした。
注文したのはざるうどんだ。
何の変哲もない普通のうどんである。
普通に食べよう。
しかし、うどんをつゆに
つけようとしたら、
箸にほとんどのうどんが
くっついてきてしまった。
ほどけないので、
仕方なくそのまま突っ込んだら
こんなことになってしまった。

ご先祖様の前で一体
何をやっているんだろうか。
彼らが千年以上も前に
こんな巨大古墳を作っていたというのに、
現代に生きる私はうどんすら
まともに食べられないとは。
私は速やかにうどんを平らげ、
足早にうどん屋を立ち去った。
さて、その後ようやく
吉見百穴の入口に来た。
そこにあった案内板を見て、
衝撃が走った。
そこにはこう記されていた。

「よしみひゃくあな」
・・・よしみひゃくあな?!
よしみひゃっけつじゃないのか?!
私は出鼻をくじかれた。
さすがは第一級の遺跡だ。
最初の一撃で常識を覆してくる。
やはりそこらへんのザコとは格が違う。
それにしても子どもの頃から
ずっと間違った覚え方を
していたとは恥ずかしい。
穴があったら入りたい。
そう思ったところで、
目の前に手ごろな穴が
百個もあることに気づいた。
私はふらふらと穴へと近づいて行った。
つづく
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