それはある霧雨の降る
肌寒い今日のような日。
というより今日のことだ。
私は友人のK氏ととある用事を終え、
共に帰途についていた。
帰りは車だった。
運転はK氏が行い、
私は助手席に座っていた。
用事が長引いたため、
辺りはすっかり暗くなっていた。
しかも、場所は山の近くで、
かなりの田舎町。
街灯もあまり整備されておらず、
漆黒の闇が周囲を包んでいた。
なお悪いことに天気は霧雨。
ただでさえ真っ暗なのに、
さらに視界が悪かった。
当然、周囲に人の気配はほとんどない。
無人の夜の田舎道を
車で走っていた。
かなり不気味な雰囲気だ。
何が出てきてもおかしくない。
そんなことを思っていると、
突然K氏が不審なハンドルの切り方をした。
私は驚いてK氏に恐る恐る尋ねた。
「どうしたんだ?
イノシシでも轢いたか?
・・・それとも、見ちゃいけないものでも見たか?」
すると、K氏は虚ろな目でこう言った。
「実は今日、3時間しか寝ていないんだ・・・」