今日は夜の新宿駅に通りがかった。
この時期だけあって、
実に多様な人々がいた。
中でも目を引いたのは、
ピカチュウのぬいぐるみを抱いた
光の無い目をした中年男性だ。
ピカチュウをなでながら、
虚ろな目で駅を徘徊していた。
彼の歩く先はモーセのように
人波が分かれていった。
そんなポケモンと共に歩む
彼を見て、思い出す人物がいる。
そう、アニメ ポケットモンスターの
主人公サトシである。
ポケモンマスターを目指して
旅立った彼が順調に歳を取ると、
この虚ろな中年ぐらいの
歳になるのではないか。
一体このサトシに何があったのだろうか。
恐らくはポケモンマスターの夢は
破れたのだろう。
そこが彼の人生の転機であった。
目的を失った彼は自暴自棄になり、
かつての仲間達は周りから離れていく。
身持ちを崩した彼は闇社会に落ち、
ロケット団に入団し、
ポケモンの密漁や密売に
手を染めていく。
そして、酒に溺れ始め、
最愛のピカチュウにも逃げられた。
全てを失ったサトシ。
かつての楽しかった日々を
追憶しながら、
ポケモンセンターで一匹の
ピカチュウのぬいぐるみを買った。
それをなでると、
ほんの少しだけ過去の記憶が蘇る。
しかし、全ては遅すぎたのだ。
これはポケモントレーナーの
ありえた未来の一つであった。
