だいたい日刊 覇権村

実益のないことしか書かない 毎日21時更新予定

縁日に行きたい

縁日に行きたい。
 
コロナ禍が始まってから
もう何年も行っていない。
 
これはとても危険な状態である。
 
コロナ以前、私は
縁日中毒だった頃がある。
 
ある夏なんかは毎週末、
縁日に行っていた。
 
毎週お祭り気分である。
 
まことにハッピーな日々である。
 
だが、しばらくすると、
異変が訪れた。
 
手にヨーヨーや
チョコバナナを握っていないと、
日常生活を送れない
体になってしまった。
 
病院へ行くと、主治医は
 
「これはいけませんね・・・」
 
と漏らした。
 
「もしこのまま縁日に
行き続けるとこうなります」
 
医者はそう言い、
パキン!と指を鳴らした。
 
すると、スライドが下りてきて、
恐ろしい惨状が映し出された。
 
そこには、
 
「ウ・・・、ワタアメ・・・
ワタアメ・・・ 」
 
と頭を抱えている人や、
 
「カタヌキ!カタヌキ!」
 
とガタガタ震えながら叫んでいる人、
 
他にも射的の的を探して、
ライフル銃を持って
ウロウロしている人もいた。
 
「ここは重篤なお祭り依存症の
患者が収容されています。
 
病棟には外から三重の
鍵がかけられます。
 
祭囃子を聞いても心拍数が
上がらなくならないと、
患者はここを出ることはできません」
 
私はたこ焼きのように目を丸くし、
恐ろしさのあまり二度と
縁日に行かないことを誓った。
 
しかし、医師は首を振ると、
 
「話はそう単純じゃない」
 
と断った。
 
「これは逆に縁日を
完全に断ってしまった人です」
 
今度は医師が
 
「ピュウイ!」
 
と指笛を吹いた。
 
すると、違うスライドが降りてきた。
 
そこには縁日で落としてしまった
かき氷のように、
地面に一体化した患者の
姿があった。
 
「彼はお祭り欠乏症の患者です。
 
彼にとっては縁日が
人生のすべてでした。
 
それを失えば、こうやって
液状化してしまいます。
 
いいですね、大事なのは均衡です。
 
それを忘れないでください」
 
そう言うと、
浴衣姿のその医師は、
金魚の入った金魚鉢を
愛おしそうに撫でた。
 

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