前回の続き。
屋台を諦めた私は、
大人しく浅草寺を見に行った。
奥に見えるのが浅草寺で、
手前にあるのが子浅草寺だ。
子浅草寺は拝観料をたくさん食べて、
めきめきと成長する。
そして大人になれば立派な浅草寺になるという。
だが、そんなことはどうでもいい。
浅草寺と言えば、なんと言っても雷門。
通称サンダーゲートだ。
私はすぐにサンダーゲートに向かおうとした。
だが、浅草上級者の友人が、
「待て、もっといい所がある」
と引き留めた。
そして連れて行かれたのは、
目の前の観光案内センタービルだった。
ビルは周りの建物より高く、
しかも屋上に出ることができた。
そこからの景色はなかなかの見ものだ。
眼下にはサンダーゲートと店通りが広がる。
素人はあのように地べたに這いつくばって
サンダーゲートを見に行く。
だが、通はこうやってサンダーゲートを
上から見下して楽しむ。
そしてパシャパシャとストロボを
雷のようにたくのだ。
これが江戸時代から続く由緒正しき
サンダーゲートの作法である。
それ以外にも、かの有名なバベルの塔や、
黄金の人糞像などがよく見えた。
ここは絶好の見物スポットである。
正式名称は浅草文化観光センターという。
無料で楽しめるので、
浅草に来たら是非行ってみてほしい。
その後、我々は帰途についたが、
私の心にモヤモヤが芽生えた。
「ああ、やっぱり地上からも
見ておけばよかったかもなぁ。
正面から見たら全然違ったことだろう。
一体なんで見ておかなかったのか。
もしあの時に見ておけば、
もっと人生違ったはずだったのに。
そんな後悔を一生引きずりながら、
孤独に人生を終えるんだ」
などと未練がましく思い始め、
おめおめと戻ってきてしまった。
そんなわけで、こちらが正面から見た
サンダーゲートだ。
うーん、ただの門だな。
思った以上にただの門だ。
サンダーゲートと言うぐらいだから、
もっと雷鳴が轟いているのだと思った。
そして辺りには観光客が、
デンキウナギに感電させられた魚のように、
ビチビチと痙攣して跳ねているような、
そんな地獄絵図を想像していた。
なんだか拍子抜けである。
それを見てふと思った。
「雷門っていうのかい?
贅沢な名前だねぇ・・・!
今からお前の名前は門だ!」
私は某ジブリアニメの悪徳老人のごとく、
吐きゼリフを残して去っていった。