今日は所用で人形町へ行ってきた。
人形町は前から気になっていた町だ。
私もよく疲れていると
「まるで人形のような目だ」
と言われるので、少なからぬ縁を感じる。
看板には人形町の名前の由来が書かれていた。
だが、こらえ性のない私は、
2行以上のキャプションが読めない。
とりあえず人形がいっぱいだから
人形町というのだ、と結論づけた。
町をふらふらしていると、
前からくたびれた表情の
中年男性が歩いてきた。
間違いなく人形である。
恐らくこれを操っている術者が近くにいるはずだ。
一体どこにいるだろうか。
またしばらく歩くと、
今度は最中を買っているご婦人がいた。
もちろん人形である。
最近の人形は随分精巧に出来ているものだ。
言うまでもないが、
最中を売っているおばさんも人形である。
人形が人形に物を売る。
完全にこの中で生態系が完結している。
調和の取れた自己完結社会だ。
さて、人形町は古式ゆかしい町だ。
和風建築が立ち並び、古き良き時代を感じさせる。
その町並みはとてもシックな・・・
シックな・・・
まったくパチンコ屋というやつは・・・。
パチンコは本当にいつでも
景観と人の心を破壊する。
だが、よく見ていると、
店からは続々と人形のように
虚ろな目をした何かがあふれ出てくる。
そういう点ではこの店も
人形町の一部なのかもしれない。
ちなみに用事先の相手は、
人形ではなく、人間だった。
なるほど、この人は多分人間使いの側だ。
この町の住人は、人形か人形使いのどちらかなのだ。
人形でないなら人形使い以外ありえない。
私は手早く用事を済ませようとした。
だが、まんまと口車に乗せられ、
相手の良いように操られた。
どうやら私は人形の側だったようだ。
人形町、恐ろしい町だ。