かつて、押入は宝箱だった。
引っ越してから間もない頃の、
まっさらな押入。
ここには大事な物だけを、
大切に閉まっておこう。
そう思える場所だった。
次に、押入は縁の下の力持ちとなった。
大事にしたい物以外も
たくさん入れた。
表には、あまり出しておきたくない。
でも、時に必要な物を
入れておく場所だった。
誰かがやらなければならない仕事だ。
今では押入は夢の島と呼ばれている。
その名の通り、全ての不要品が
押し込まれ、入れられる存在。
住人はその名を聞くと、
静かに目をそらすという。