大寒波。
今日も寒すぎた。
手がかじかんで精密な作業が
できなくなる。
寒すぎて皆の動きも鈍っている。
周りの人達の動きが、
いつもより遅く感じた。
いや・・・
私が強くなったのか・・・？
よくバトル系の漫画やアニメで、
修行で強くなった主人公が
敵の動きを見て、
「こんなに遅かったか・・・？」
と言っているのを見かける。
私もそうかもしれない。
そういえば昨日、30秒ほど
プランクと腹筋をやった。
あの過酷な修行が
私を遙か高みまで
押し上げたのだろう。
そう思うと私は何でもできるような
全能感を感じた。
ニュースでは路面凍結で
坂を上がれないバスの姿が
映されていた。
もし私があそこにいれば、
バス程度は片手で坂の上まで
押し出せただろう。
巷を騒がせている強盗団も、
強くなった私の力をもってすれば
ワンパンで終わりはずだ。
絶対的な力を手にした気分だ。
しかし、そんな私の目の前を、
寒さで足早に横切る人がいた。
素早い。
とても目では追いきれない。
私の自信は崩壊した。
私は強くなってなどいない。
ただ寒さに震える普通の
ヒューマンに過ぎなかった。
寒さは私から判断力、自信、
そして希望を奪っていった。
寒波、許せない。
春の到来を所望する。
