靴下が片方なくなる。
とてもよく起きる問題だ。
とりわけ、お気に入りの靴下が
なくなると、喪失感は大きい。
私も先日、お気に入りの
般若心経靴下がなくなって、
一週間ほど立ち直れなかった。
こうした問題の解決策を、
私はしばらく考えた。
そして発見した方法、
それは同規格同デザインの靴下を
大量に揃えることであった。
それも、ただデザインが同じではなく、
左右どちらでも履けるタイプのものだ。
右でも左でも互換性があるものがいい。
愛着を持った靴下を失わないためには、
どうすればいいか？
それは、始めから愛着を持たないことだ。
失うことが怖ければ、
最初から持たなければいい。
よく小説や漫画で出てくる
一番ダメなタイプのあれである。
しばらくしたら、主人公に
諭されるタイプのやつである。
そういうわけで、私は量産型の
モブ靴下を20足ほど買った。
みんな違ってみんないい。
そんな時代はもう終わった。
みんな同じなんだ。
そして代わりはいくらでもいる。
こうして我が家は、
次々と人材が使い捨てられる
ブラック企業と化した。
人間にやったら最悪だが、
靴下相手ならいくらやっても
構わないだろう。
こうした体制が確立して
しばらく経つが、今では従業員数が
何人いるかも把握していない。
きっと何人かは
こっそり失踪したり、
退職したりしているのだろう。
もしくは自分探しの旅に
出ているのかもしれない。
しかし、不安は全くない。
代わりはいくらでもいるのだから。
