だいたい日刊 覇権村

実益のないことしか書かない 毎日21時更新予定

1日1善

その時、私は力の限り走っていた。

私には走らねばならない理由があった。

というのも、先方との約束の時間が、

刻一刻と近づいていたからだ。

なぜこんなに追い詰められて

しまったのだろう?

それには深い理由がある。

それは昨日の台風が関係する。

台風が過ぎ去り、今日は快晴の空が

見れるかと思いきや、

いまいちパッとしない

じめじめした気候だった。 

そのため心がぐんにゃりし、

ぐにゃぐにゃしている内に

時間が詰まっていた。

いわゆる不可抗力というやつだろう。


私はひさしぶりに全力で走った。

だが、走っている途中、

道に財布が落ちていた。 

時間を優先するなら

無視するのが良いのだろう。

しかし、私の中の強い正義感や、

「ダメだ、もう走れねぇ」という疲労感が、

それを許さなかった。

というわけで、落とし物を交番に届け、

その時の状況だとか、名前やら住所やら

権利放棄の書類を書き、

私は遅刻した。


待ち合わせ場所に到着後、

私は事情を話し、謝罪した。

すると、意外に許してもらった。

それどころか

「それは良いことをしたね」

とほめてもらえるほどであった。

このように、善行を行うと、

思わぬお目こぼしもあったりする。

善とは良いものだな、と私は思った。


もっとも、落とし物を届けたりしなくても、

余裕で遅刻する時間だったことは黙っていた。