我々はホテルに着いた。
先日書いた通り、
アメニティバイキングは、
嬉しいサービスだった。
もちろん良かったのは、
それだけではない。
ロビーもとても綺麗だった。
ここでジェンガをやったら、
怒られるだろうか。
ちなみにこの脇にある自動販売機、
いつも私が通りがかると
アンパンマンのテーマが流れ始める。
客の精神年齢を的確に見抜く
機能があるのだろう。
室内はさらに素晴らしかった。
見てほしい、この部屋を。
間接照明が完備され、
布団もフカフカだった。
何も言うことはない。
気になるのはルームサービスだ。
この写真を見てほしい。
とりわけ、この部分である。
そう、このペンとメモを使えば、
ダイイング・メッセージを残せるのだ。
見ていればわかる通り、
世界は密室殺人に溢れている。
旅先で見知らぬホテルに
泊まろうものなら、
密室殺人で殺されても、
それが映画化されても
おかしくはない。
きっとこのホテルでも500人ぐらいは
密室殺人で死んでいるはずだ。
だが、そんな時でも
ダイイング・メッセージを残せば、
名探偵が真犯人を見つけてくれるだろう。
こうしたサービスは、
お客様の遺族の声や、
成仏できないお客様の要望を受けて、
できたものだと思われる。
また、扉には何色かの
ステッカーが貼られていた。
これらのどれを貼るかで、
どこまでクリーニングしてもらうかを、
決めることができる。
例えば、ゴミ箱だけ
綺麗にしてもらいたい時、
布団まで掃除してもらいたい時、
人には言えないものを処分したい時、
等々である。
また、ホテルの人にも
見せられないものを処分する時は、
赤いステッカーをドアに貼っておく。
すると、暗黙の了解で、
お互い何も見なかったし聞かなかった、
という体で接してくれる。
先ほどとは逆の立場になった時に、
有効なサービスだ。
あと、部屋には電話機もついている。
急に寂しくなった時はかけてみよう。
きっと、ホテルの人が悩みを
聞いてくれたり、カウンセラーを
紹介したりしてくれるはずだ。
揺りかごから墓場まで。
お客様のどんなニーズにも応える。
それが現代のホテルなのだ。